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「左右」と「兎角」

 先日、「とにかく」や「ともかく」という言葉を「左に右く」「左も右く」と書く形が、大正時代〜昭和初期のころのいくつかの文献で確認されることを書きましたが。

 「左に右く」「左も右く」以外に、辞書にも載っている「兎に角」「兎も角」と書く書き方があります。こちらについては由来が分かりました。「兎角」、つまりウサギの角は在り得ないことから、現実に存在しないものの譬えである仏教語に「亀毛兎角」という言葉が存在しているのです。

 「とかく」は様々な事柄を表す名詞、もしくは副詞であって、現実には存在しない意味を表す「亀毛兎角」とは意味が違うのですが、音が同じから混同されて、さまざまな事柄を表わす「とかく」に「兎角」と当てるようになったようです。

 この「兎角」を使ったことで特に有名なのは明治〜大正の文豪・夏目漱石。『草枕』の有名な冒頭にも「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角人の世は住みにくい」とありますが、こんな感じで漱石は多用しました。「とかく」「とにかく」「ともかく」に「兎角」が使われるようになったことに、漱石の影響もあるみたいです。漱石は他にも独特の当て字を使用することが多いので有名で、他に「沢山(たくさん)」「場穴(ばけつ)」「浪漫(ろまん)」などもあります。今でもメジャーとはいえないものの、辞書には載ってるぐらいのレベルですね。

 「左に右く」「左も右く」を調べていた時には辞書に載っていなくて、かなり不安を感じましたが、この「とかく」を引くと、「左右」という当て字も載っていました。私が持っている電子辞書に収録されている小学館『大辞泉』と大修館『明鏡国語辞典』の二種類の辞書には載ってました。「とにかく」「ともかく」で引くと載っていませんが、辞書に載っていることでちょっと安心しました。

 しかし、当て字としては「兎に角」より「左に右く」の方が意味がまだ近いと思うんですが…やはり読みにくいからでしょうか。

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 さて、最初に紹介した仏教語「亀毛兎角」は現実に存在しないものの譬えと書きましたが、小学生時代前半を塗りつぶした名作ゲーム『ドラゴンクエストIII』のモンスターに「いっかくうさぎ」がいたことを思い出しました(笑)

 
 有難くも忝くも、仏さまは「亀毛兎角」のお言葉を以て、世の中の子どもたちと、かつて子どもだった人たち(私含む)に『ドラクエ』はあくまでフィクションですよ〜とお教え下さっているのでしょうか(笑)

 あと「亀毛」に関して、能〈鶴亀〉の亀の冠には毛が生えていたように思うのですが、これもフィクションなんでしょうか!?

JUGEMテーマ:日本語
柏木ゆげひ | 日々雑感(未分類) | 11:19 | - | - | - | - |

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