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大川瀬住吉神社の能舞台

大川瀬住吉神社能舞台
 私が育った街は新興住宅地が人口の大半を占めている街で、古典的・伝統的である能楽とのゆかりなんてないと思っていたのですが、先日、大阪の観世流の名門・大西家の御先代、大西信久師の『初舞台七十年』(1979年)という本を読んでいたら、大西家一門の坂口信男師による、私の育った街にある神社で奉納能が行われている文章が収められていたので、びっくりしました。

 以下引用。

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大川瀬の能

 三百年の伝統を持つ、兵庫県大川瀬住吉神社(石原幸雄宮司)の、能狂言奉納が昭和四十八年四月十六日に、同社の舞台で催されました。
 この、奉納能のことの起りは、昔、大川瀬地区と隣地区との間に何かの争いが生じて、遂に訴訟沙汰になりました。その時、大川瀬地区の人々は、住吉神社に「この度の訴訟に勝たしていただけば、十年毎に能を奉納します」と、願をかけたのだそうです。そして、その訴訟に勝ったので、この行事が始まったといわれています。
 以前は、手塚亮太郎師が奉仕していましたが、戦後は、信久師が十年毎に奉仕しています。
 当年は前回からでは十三年目になりますが、これは住吉神社が重要文化財に指定されたのを機として、社殿修復を行った都合で、三年おくれになったのだそうです。
 当日は信久師一門および関西の三役方一行五十余人の大勢で奉仕しました。
 信久師の翁に始まり、乱・双之舞まで、能六番に、見所は堪能しきっていました。特に智久師の長男礼久君(五才)、次男孝久君(四才)の小袖曽我、相舞には、見所の拍手が、会場をかこむうっ蒼とした杉木立に、しばしなり止まずにこだましました。
 約千平方メートル程の境内には、地元の氏子八十人余をはじめ、阪神間の愛好者等、六百人程の人々が見所を賑わしていました。
 翁が終る頃には、朝からの雨も止み、見所は枡席にビニールを敷き、重詰めのご馳走をつまみ乍ら酒をくみ交わすなど、伝え聞く昔の勧進能さながらの風景でした。
 同席した寺本博行君は「野外で能を見るのははじめてです。田楽の盛んな時代には、野外で村の人達に鑑賞されたのが本来の姿だったと聞いていますが、今日はよい勉強になりました」と、しみじみ、古典の世界にひたっていました。
(坂口信男記)
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 38年前の文章ですから今より随分景気も良かったのでしょうが、〈翁〉付きの能6番の奉納能ですから随分豪華だったのでしょうね。坂口信男師が番組も記録しておいて下さっていればより嬉しかったのですが。

大川瀬住吉神社能舞台
 さて、この大川瀬の住吉神社。機会があったので、訪ねてみました。新興住宅地が中心となった今の街の中では外れといって良い場所にある神社なのですが、本殿は国の重要文化財、能舞台も県の文化財に指定されているという立派な神社で、鳥居も最近新調されたのか森の中で赤く映えていました。

 調べても電話番号など連絡先が分からず、いきなり訪ねて、しかも社務所で何かの宴会中だったにも関わらず、快く対応していただけて、ありがたかったです。天気が悪かったので、雨風よけの戸を開けて舞台の様子を見ることは叶わなかったのですが(連絡をくれたら開けても良い、と仰っていただけましたので、次の機会を狙ってます)、今でも大西家が10年ごとに奉納能を行っているそうで、次回は再来年の平成25年の予定とのことでした。

 なお、市のホームページによると、「本来は桁行1間梁間2間の舞殿として建てられた物に、隣接する長床を廊下で結んで橋掛かりとし、能舞台として使っている。創設年代は不明であるが、社記に『享保11年(1726年)舞堂修繕』とあり、柱が大面取りであることから江戸初期と考えられる。能楽奉納の始まりは寛文年間(1661年〜)からであると伝える」と。

 再訪までには市史を見るなど、より下調べをしたいな、と思っています。とりあえず名生昭雄著『兵庫県の農村舞台』(和泉書院、1996年)という本に少し載っているという情報を得たので、それを取り寄せてみました。届くのが楽しみです。
柏木ゆげひ | 行ってきました | 18:13 | - | - | - | - |

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