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桂蝶六入門二十五周年記念独演会「愚直」

桂蝶六二十五周年記念独演会「愚直」

 218くんと過ごした日、後編。昼に「菅楯彦」展を見た後は、大阪に移動。難波のワッハホールへ「桂蝶六入門25周年記念独演会『愚直』」を見に行きました。

 会のメインである桂蝶六さんの落語は、聞いたことはありません。ただこの方、落語家であると同時に狂言方大蔵流の安東伸元師に師事されていて、安東師主催の「大和座狂言」メンバーのひとりでもあるのです。

 安東師ご自身は時々茂山忠三郎家の一員として能会などに出演なさりますが、ほかのお弟子さんたちはあまり出演の機会がないので、拝見する機会がなく。偶然ながら8月に安東師一門の狂言『神鳴』を拝見する機会があったのですが、その時は地謡がしっかりしていて、なかなか良いなーと思ったので、今回落語の方はどうだろうという興味で行くことにしました。

 まあ、何よりも落語家としての大師匠である桂春團治さん(春團治→故・春蝶[1993年没]→蝶六という師弟関係)が特別出演なさるのが楽しみだったのです。今年の春、春團治さん出演の落語会の券が手に入ったものの都合で行けなくなったということがありましたが、その券を引き取って、代わりに見に行ってくれたのが218くん。その彼が春團治さんのことを絶賛していたので、私も機会を得たいなぁと。

 それと「御祝儀」という形で、出演の桂吉坊さん。今までも何度か日記で取り上げた方ですが、この方、ホントお上手だと思いますし。正当派ですし。しかも能の稽古もなさっていて、能の会の客席、場合によっては司会役として時々登場…というのが能楽ファンとして嬉しい(笑) あと吉坊さんと私って同い年なんですよね。この年になっても何者にもなれず、進む道すらはっきり見出せていない私に対して、立派に芸道の道を歩まれている吉坊さんの姿は憧れなのです。

 と前置きが長くなりましたが、感想を。

★落語『つる』桂吉坊
 最初に前座として登場される吉坊さん。元気よく、晴れやかにまとめてらっしゃいました。いつか「生き字引」のことを落語ファンは「生き地獄」というと教えられたことがありますが、この噺が元ですね。落語には先に教えられたことを、真似しようとして失敗する噺がよくありますが、気合いを入れるほど空回りしてしまうのは、自分も同じかなと感じます。

★落語『昭和任侠伝』桂蝶六
 蝶六さんの師匠にあたる故・春蝶による新作落語。ヤクザ映画の世界に憧れる男が登場する噺ですが、私みたいなヤクザ映画を知らない人間にも楽しめる良い作品だと思います。結局、私もヤクザ映画ではないものの、能楽に憧れてるから気持ちが分かるというか。母親に「妹ばっかりに仕事さして」と言われると、「さくらはもう寝たかい?」という『男はつらいよ』のネタが混じっていて楽しい。

★落語『鋳掛屋』桂春團治
 三味線で「野崎」が流れると、「おお、生春團治!」と思ってしまいました(笑) たった1つだけ、私が聞き分けることのできる落語の出囃子が桂春團治さんの「野崎」です。CDで聞き慣れしているんですね。前半は親が子どもを寝かそうと昔話を聞かせるものの、親の方が寝てしまって「今日びの大人は罪がないわ」で終わる短い噺(題知らず)を枕代わりに、「鋳掛屋」に入る形。後で聞き返したら、CDも同じでした(笑) 初めは渋いお声なのですが、気付けば子どもたちを自在に演じていらっしゃるのが凄いです。「そらそうやなー、おったん」という、あどけない口調で鋳掛屋をからかう子どもが特に印象的。

★大蔵流狂言『靱猿-替装束』
 安東伸元師をシテ大名に、猿曳を桂蝶六さん。太郎冠者が蝶六さんのご長男で、猿がご次男。この会は記念の落語会であって、狂言の会ではないので良いんですが…素人会を見ているような雰囲気でした。この曲は子ども演じる猿の可愛さが目立ちますが、それに流れてしまうと、狂言としての全体が潰れてしまうんですね。安東師は謡に力を入れてらっしゃる方だけに、猿歌自体は良かったです。

★太神楽 海老一鈴娘
 ナイフ投げや、お皿を回して出刃包丁の上に載せたり、さらにその出刃包丁を、出刃包丁で支えたり(出刃包丁は最大3本まで増えました)、板と茶碗とぼんぼりを積み上げて顎で支えたりという曲芸。凄いなーとは思いますが、どちらかというとハラハラしてしまう気持ちが強かったです。こちらのページの写真が雰囲気出ているので、良ければご覧下さい。

★落語『たちきれ』桂蝶六
 米朝さんのCDで聞いた『たちぎれ線香』と同じ噺。大阪船場の若旦那が芸者に入れ込み、100日の間、蔵に閉じ込められる。いっぽうの芸者のほうは若旦那にふられたと勘違いし恋病に伏せたのち死んでしまう…。それを知らずに100日が明けた若旦那はお茶屋に飛んでいく…という落語には珍しい純愛悲恋。だけど、落語なので湿っぽいだけにはならず、どこか華やかで。良い噺でした。もう少し演技が抑えめの方が私は好きですが。

 落語はとっても楽しめた会でした。終わった後は、ちょっとだけ難波で飲んで(ここでも218くん、春團治さんを絶賛)、京都に帰らなくてはならない218くんとお別れ。一日中つきあってもらって本当に楽しかったです。時々はこういうのいいなぁ、と思いました。彼の宅に上がり込んではお酒飲むのも良いのですが、いつもお酒だけで終わってしまうので(笑)

桂蝶六入門二十五周年記念独演会「愚直」
◆10月27日(土)18時半〜 於・ワッハホール(大阪市中央区)
★落語『つる』桂吉坊 ★落語『昭和任侠伝』桂蝶六
★落語『鋳掛屋』桂春團治
★大蔵流狂言『靱猿-替装束』
 シテ(大名):安東伸元 アド(猿曳):森五六九(桂蝶六)
 アド(太郎冠者):森達弥 アド(猿):森聖龍
★太神楽 海老一鈴娘 ★落語『たちきれ』桂蝶六
funabenkei | 伝統芸能(能・狂言以外) | 10:28 | - | - | - | - |

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