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松風と村雨で良かった

4061833650米朝ばなし―上方落語地図
桂米朝
講談社 1984-11

by G-Tools

 上方落語には「旅ネタ」と呼ばれる一群の道中噺があります。一番有名なのはお伊勢参りの行き帰りを物語る『東の旅』ですが、ほかにも東西南北それぞれ存在します。その中の『西の旅』に、須磨で能『松風』ゆかりの松風村雨堂に触れる下りがあります。

 「在原行平がここへ流されてきたんやな。そこに姉妹の海女がおってな。行平のお手がかかった」「ゆきひら(=行平鍋)の手が欠けたら、植木鉢にてもするよりしゃあないな」「何を言うてるねん。つまり、二人とも側女にしたんや。その姉妹の名前が俗でいかん。なんかええ名前をつけようと思うてるところへ、松風がサーッと吹いてきて、村雨がハラハラと降りかかったので、姉を松風、妹を村雨と名付けたんや」
 「うまいこと風が吹いて、雨が降ってきたさかいええけど、ピカピカとカミナリが光って、ゴロゴロときてみい。片や稲妻片や雷電」「すもうじゃがな」

 海女乙女の稲妻と雷電!(爆笑) でもこういうネタ大好きです。まだ実際に聞いたことはないのですが、桂米朝さんが落語に登場する関西の土地を紹介した著書『米朝ばなし―上方落語地図』で紹介されていました。行平鍋(雪平鍋)の名前も、在原行平が松風・村雨の姉妹に塩を焼かせたことに由来するそうですね。能楽関連の豆知識。

 落語に登場する上方の土地について、いろいろ米朝さんが紹介されているのですが、何よりも圧倒させられるのが米朝さんの博覧強記ぶり。浄瑠璃・歌舞伎・講釈・浪曲はもちろん能(謡曲)と狂言も次々に引用されて、古い上方の姿が蘇ってきます。うーん、凄い。

 中には能『忠度』に、「心の花か蘭菊の。狐川より引き返し。俊成の家に行き歌の望みを嘆きしに」と登場する狐川なども。薩摩守忠度の和歌の望みを語る『平家物語』でも有名な場面ですが、「この狐川という名の川が実際にあったのかどうか、所在がちょっとあいまいなところが、いかにもこの川の名前らしい」と書きながらも、いろいろと考察をなさっています。

 2004年2月14日に京都・大江能楽堂で催された「心味の会 特別公演」では、狐をテーマに能『小鍛冶-重キ黒頭』と狂言『釣狐』が演じられましたが、もうひとつ舞囃子で『忠度』が演じられているんですよね。初めて見る『忠度』をカッコ良い曲だな、と感じましたが、どこが狐なのかと思っていたところ、この「狐川」だったわけですね。うーん、なんだか懐かしい。

 文章の中には昭和50年代の写真。中には「今も少し風情が残っている」といった感じの解説がつけられていることもありますが、この本の出版自体が既に20年前。写真なども一時代前といった感じを受けて、古いものはどんどんとなくなっているんだな、と感じます。


 ところで桂米朝さん、8日朝にご自宅で転倒されて、入院したというニュースを読んでびっくりしました。頭を打たれたわけではなく意識ははっきりしてらっしゃるそうですが、腰椎圧迫骨折の疑いがあるとのこと。今月と来月の落語会は休演されるそうです。

 …一日も早い復活をお祈りします。

funabenkei | 本の感想(マンガ含) | 08:38 | - | - | - | - |

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