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目利きの肖像〜白洲正子

 今日、NHK教育で放送された「目利きの肖像〜白洲正子」の第3回目を見ました。白洲正子さん(1910-1998)は元華族で、日本の美について多くの著書を残された随筆家ということしか知りませんけれど、梅若六郎師の著書『まことの花』に何度もお名前が登場されていましたし、能には非常に深い造詣も持ってらっしゃったようです。

 今回の副題は「能・色気の形」。案内人は元首相の細川護煕さん。私が学校で国会や内閣の制度について習ったり、新聞を読み始めた頃に首相になった方なので特に印象深く、なんだかお久しぶりって感じです(笑)

 細川さんも幼い頃、熊本藩細川家お抱え役者の系統である桜間金太郎(1889-1957、シテ方金春流・後に弓川)に稽古を受けたそうです。当時は弟さんと「また金太郎が来た〜逃げろ」なんて言って、お嫌だったそうですが(笑) しかし論語の素読などと並んで、能が日本の教養のベースなのだと仰っていました。子どもの頃に一流能役者の稽古と論語の素読!? さすがは元華族。

 さて白洲正子さんの話。彼女と能の出会いは4歳の時、靖国神社での観能中に事故で明かりが消え、その後に灯された松明に浮かび上がった『猩々』だったといいます。番組では、後になってそのことを書いた白洲正子さんの自伝が読まれますが、その文章がまた絶品。思わずその『猩々』を見たいと思ってしまうほどです。

 二世梅若実を師匠として稽古に励み、14歳の時に女性として初めて能舞台に立ちます。『土蜘蛛』の袴能のようです。今でこそ女性能楽師もいらっしゃいますが、当時、女性が能舞台に立つことは本当に異例で、奇異な目で見られたこともあったようです。そのことを「為すまじきを為すは難きと知りながら 女の身にて能を舞ふなり」と詠んでらっしゃいます。

 白洲正子さんは特に勇ましい男の舞を得意としたそうです。当時を知っている梅若六郎師(二世実の孫)は「あの人は違う」「外側をきちっと学ばれ、そして内を充実させていた」と仰っていました。画面に映る当時の写真を見ても、隙のないお姿がその言葉を裏付けます。

 白洲正子さんは50歳で梅若家から免許皆伝を受けますが、その直後、能をやめてしまいます。「女性には能は表現できない」と。男の能は女でもできるが、女の能は女が演じると生々しくてダメなんだ、と。…厳しい捉え方ですね。4歳からずっと能を続けてきたわけですから、本当にお好きだったのでしょうに…。しかし素人だからと妥協することはせず、思い切って捨て去ってしまう。

 しかしその後、白洲正子さんは本格的に文筆活動を行うようになり、現在言われる随筆家としての「白洲正子」へと繋がるのです。そしてその著作に窺える日本文化・古典文学などへの姿勢には背景として間違いなく能への深い理解があったといいます。

 晩年になって、白洲正子さんは友枝喜久夫師(1908-1996、シテ方喜多流)の能に触れ、再び能を見るようになります。友枝喜久夫師はそのころ白内障を患い、ほとんど失明状態だったのですが、それでも印象深い舞台をいくつもつとめたといいます。白洲正子さんも友枝喜久夫師の演能だけは欠かさず見に通ったのだそうです。

 白洲正子さんが仰る能の魅力とは、男と女の間を行くきわどい一瞬のひらめきの色っぽさ…のようです。番組で『井筒』の一部が放送されていましたが、この能にある男が女を演じ、その女が愛しい男の装束を着て「男なりけり。業平の面影」となる部分などがその極地でしょうか? 併せて世阿弥は足利義満に寵愛された稚児だったことも取り上げられ、『花月』に登場するような男でもなく女でもない美少年と能の美の関係…などなど、深過ぎて私では上手く書けません(苦笑) 白洲正子さんの著作も読まなきゃダメですね…。

 例によって再放送が行われます。2月28日(火)5時5分〜30分。見逃した方はチェックです。白洲正子さん自身にも興味が出て来たので、再放送も終わってしまった第1回と第2回の再々放送を希望!(笑)

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