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はしごして観能【追記後】

 今日は、大槻能楽堂自主公演の復曲能『檀風』と、六甲アイランド能をはしごして見て来ました。出演者も大勢ダブっていますし、大丈夫とは思っていたのですが、大槻能楽堂前にて知り合いの方と話し込んでいる間に目の前を福王和幸師以下、ワキ方軍団が出発していかれました(笑)

 さらに大倉源次郎師を(勝手に)お見送りしてから出発。どれだけ余裕やねん、って感じですが、開演時間の18時半までに着けばいいや、と思っていたからです。それでも六甲アイランド能の開場時間である17時45分には着いてました(^^) 大阪市営地下鉄谷町線→阪神電車特急→六甲ライナーと乗り継ぎましたが、思ってたより早く移動できるものですね。

 ちょっといろいろ、書き足らない部分がありましたので追記しました。

大槻能楽堂自主公演 能の魅力を探るシリーズ
◆9月18日(日)14時〜 於・大槻能楽堂

★復曲能『檀風』
 前シテ(日野資朝)=大槻文蔵
 後シテ(熊野権現)=観世銕之丞
 子方(梅若)=赤松裕一
 ワキ(帥の阿闇梨)=福王茂十郎
 ワキツレ(本間三郎)=福王和幸
 ワキツレ(船頭)=福王知登
 ワキツレ(輿舁)=永留浩史・喜多雅人
 アイ(本間の太刀持)=善竹隆平
 アイ(早打)=善竹隆司

 地頭=浅井文義
 笛=藤田六郎兵衛 小鼓=大倉源次郎 大鼓=河村総一郎 太鼓=上田悟

★復曲能『檀風』あらすじ
 佐渡の本間三郎は、鎌倉からの指令により、流人として預かっていた壬生大納言・日野資朝を斬刑に処することになった。そこへ帥の阿闇梨に伴われて、資朝の子・梅若が父との対面にやってくる。本間は同情しつつも梅若の目前で資朝を斬る。(中入)
 本間は資朝の遺言とともに遺体を阿闇梨に渡し、梅若と共に本間の居城に休むように伝える。阿闇梨は資朝の供養をし梅若を諭すが、梅若は本間を仇として討って欲しいという。その健気さに、阿闇梨はついに力を添えて本間を討つ。船着場まで逃げてきた二人は便船を請うが、船頭は無情にも船を出してしまう。そこで阿闇梨が熊野権現に祈ると、権現が現れて船を吹き戻して二人を乗せて若狭まで送り届けたので、無事に帰京が叶ったのだった。

 『檀風』は、後醍醐天皇の側近で討幕運動に失敗して流された日野資朝(1290-1332)の処刑の話を扱った能です。曲名は佐渡の守護代だった本間氏の居城である「雑太城」の別名で、資朝が詠んだ歌「秋たけし檀の梢吹く風に。雑太の里は紅葉しにけり」に由来するという話です。でも、曲中にはこの和歌は出て来ません(^^;) それにしても、南北朝時代が扱われた能って珍しいですね〜。

 対話中心に進んで行く非常に劇的な曲でした。…というか、対話が能とは思えないほどに多いです(笑) 大槻能楽堂自主公演では詞章を印刷したものがもらえるのですが、普通はB4片面で済むのが、B4片面と裏側の5/8! 普段比162.5%です(笑)

 対話が多いぶん謡の要素が少ないですし、対話中に舞うわけにもいかないので(笑)、舞の要素も少なく、囃子もやはり比較的少ない曲でした。太鼓に至っては後シテが登場するときの早笛を打つだけ(^^;) 正座ご苦労様と思ったものです。

 印象が強かったのは前シテの日野資朝とワキツレである本間三郎。大槻文蔵師は、直面に装束姿が本当に上品に似合う方だと思います。それが資朝の大納言という身分、そして死を近くに迎えた者の澄んだ雰囲気に何ともいえない合致していて、ステキでした。もちろん、見た目だけではなくて、立ち姿や謡の調子なども含めての話です。

 そして本間三郎は、常に資朝に対して、罪人ながらも敬意を以て対する姿が印象的。最初に、下人である太刀持に「囚人の所縁に対面は禁制にてあるぞ。その分心得候へ」と命じながらも、太刀持が取り次いだ梅若と阿闇梨の到着に対して「総じて囚人に対面は堅く禁制にて候へども。遥々御下向にて候程に。その由資朝の卿に申し対面させ申さうずるにて候」と情にも通じていることが語られます。

 もっとも資朝は遥々訪ねてきた我が子を巻き添えにしたくないばかりに「子は持たぬ」と言い放ちます。しかし、処刑の時になって本間に対して「近ごろ面目もなき申し事にて候へども。真はそれがしが子にて候」と胸の内を明かし、本間も「我らも始めよりさやうに見申して候へども。深く御隠し候ほどに申さず候」と理解を示して、梅若の帰京の便宜をはかることを約束します。

 その言葉を聞いて「あらありがたや候。さてはこの世に思ひ置く事もなく候。はやはや頸を打ち給へ」と、資朝は思い残すこともなく、きっぱりと斬られるのでした。殺す側と殺される側との間にある信頼関係。歌舞伎の時代物にも通じるような情の世界ですね。理屈を超えて好きです、こういうの。「子は持たぬ」と言い放つ時に、すっと目を本間から外した資朝の姿が目の裏に残っています。

 もちろん、ワキの帥の阿闇梨と子方・梅若は最初から最後まで常に舞台にいる「主役」でしたし、なんだかワキの技術を存分に見せていただいたという感じでした。こういう能があるのも面白いですね。

 ちなみに観世流では復曲ですが、宝生流・金剛流では現行曲として演じられているそうです。また、ほかの流派でも見てみたいですね。


六甲アイランド能 能・狂言の夕べ
◆9月18日(日)18時半〜 於・神戸ファッションマート1Fアトリウム

★素囃子『盤渉早舞』
 笛=赤井啓三 小鼓=清水晧祐 大鼓=大村滋二 太鼓=上田慎也

★大蔵流狂言『神鳴』
 シテ(神鳴)=茂山千三郎
 アド(医師)=善竹隆司
 地謡=茂山茂・善竹隆平・善竹忠亮・茂山童司

★観世流能『鞍馬天狗』
 前シテ(山伏)/後シテ(天狗)=吉井基晴
 子方(牛若丸)=上田顕崇
 子方(花見の童)=上田絢音・(公募の子どもたち)
 ワキ(東谷の僧)=福王和幸
 ワキツレ(同伴の僧)=福王知登・山本順三
 アイ(能力)=茂山茂
 アイ(木葉天狗)=善竹隆平・善竹忠亮・茂山童司

 地頭=上田貴弘
 笛=赤井啓三 小鼓=大倉源次郎 大鼓=大村滋二 太鼓=上田慎也

 毎年この時期に催されている六甲アイランド能。席に座っても1,000円ですが、立ち見なら無料というのが嬉しいです。演目の間には大倉源次郎師による解説がなされますが、それを英語に通訳されるホテルの方の頑張りぶりが、ちょっとした見どころだと思っています。能の解説って、非常に日本語特有の表現が多いですから、翻訳は難しいと思いますもの。これからも催しが続くかぎり頑張っていただきたいです(笑)

 六甲アイランド能は、今回は音響が気になりました。面をつけた役の声は聞き取りにくかったですし、囃子もなんだか散漫な印象を受けてしまいました。こんなのでしたっけ? 六甲アイランド能に行くのは今回で4度目ですが、今まで音響が気になった覚えがないのですけれど…。やはり能や狂言には広すぎる空間なのでしょうか。

 そんなわけで私は今回、十分に楽しみきれなかったのですけれど…全く偶然ながら、先月の「ちゃっと!狂言」で一緒になった方と出会いました。その方は狂言は何回か、能は初めて、という方だったのですが、「天狗の動きが面白かったですね〜」と仰っていたので、なんだか嬉しかったです(^^)

■関連記事
『檀風』の視点
ケロ子のケロケロ日記:六甲アイランド能
夢日記〜あんたって夢ばかりみてるわね〜:能と狂言
末摘花のひとりごと♪:六甲アイランド能・・
観能メモ:第八回六甲アイランド能 能・狂言の夕べ

funabenkei | 能・狂言鑑賞記録 | 23:25 | - | - | - | - |

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