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なんて素敵にジャパネスク(4)不倫編

4086112612なんて素敵にジャパネスク(4)不倫編
氷室 冴子
集英社 1989-03

by G-Tools

 『なんて素敵にジャパネスク』のシリーズは1巻から「続アンコール!」までは、全体としては繋がってはいますが、話としてはそれぞれの巻の中で完結していました。しかし、3巻《人妻編》から8巻《炎上編》までは、巻末で何らかの引きをわざと残す、ノンストップで一続きのストーリーのようです。私、完結しない話の感想を述べるのは苦手なんですけど(汗)、なにせ全体を読んでいると前の方の感想が薄れてしまいそうなので書きます。

 吉野で会った謎の男「峯男」の正体が高彬の乳兄弟・守弥であったことを知って驚く瑠璃姫。さらに煌姫からの衝撃の告白を受ける。かつて、守弥と手を組んで瑠璃姫と高彬の仲を引き裂くために高彬を誘惑したことがあるというのだ! 真相を問いただすべく、守弥を呼びつけるが、そこに小太刀を手にした高彬が乗り込んで来た。瑠璃姫が男と密会しているという投げ文があったらしい…。

 この巻のメインは、何と言っても瑠璃姫の不倫を疑った高彬が、小太刀を持って駆け込んで来るシーン。たぶん《不倫編》という名前はここから付けられたのだと思いますが、その高彬の恐ろしさといったら。普段上品で大人しい高彬だからこそ。少々堅苦しいけれど一途な、高彬だからこそ。恐ろしい。

 でも一方で高彬の「嫉妬に狂う男」というのが、とても実感できるのです。もう一気に頭に血が上ってしまって、居ても立ってもいられず、暴れ狂う。理屈を言えばそんなところですが、本人も苦しい状態です。うやむやでよく分からない方がかえって、イライラしてしまう。それを相手に爆発させたところで、何も解決しないどころか、状況は悪くなる可能性が高いにも関わらず、理性的な思考はどこかにぶっとんでしまいます。その人が好きなほど、裏返えった時は恐ろしいものです。高彬は「お勤め大事」な人ですが、その勤めより瑠璃姫のことを優先することは2巻で描かれている通りです。

 そのシーンの間にも、また後にも瑠璃姫が高彬に何度も「あたしのいったこと、ぜんぜん信じないで」と言ってますが、残念ながら到底信じられるものではないと思います。デカルトの哲学ではないですが、疑いに疑いを重ねてそれでも疑えない状態になるまでは、どうしても疑ってしまうでしょう。あまり余裕を醸していると、気付いた時には他の男に取られている、なんてこともありますし。瑠璃姫の信じて欲しい気持ちも、それはそれで分かるのですけどね。

 ところで、前巻では苦手だった煌姫ですが、この巻では「瑠璃姫は、あたくしがお嫌いね」というセリフを始めにカミングアウト。今までのどこか奥歯にものの挟まったような状態が嘘だったかのように、ポンボンと歯切れが良くなります。瑠璃姫のモノローグに「得体の知れないところがあった」「なにかフに落ちないものがあったのだ」でも「今夜の煌姫は、いままでとは明らかにちがう」とありますか、それは本当にそのまま、私の気持ちと同じでした。氷室冴子さん、うまいなあ〜。

 煌姫の瑠璃姫に対する敵意は剥き出しになるわけですが、不気味さがないからか、読んでいて小気味よくすらあります。まあ、瑠璃姫や高彬・守弥にとってはそんなこと言ってる場合ではない状況になりますが、そこは傍観者たる読者の勝手(^^;) 「瑠璃姫は、あたくしの座右の銘を、ご存じでして?」と言い放つ姿は、どこか威厳すらあるから不思議です。まあ、続く言葉が「うまい話には、ウラがある」「人を見たら、泥棒とおもえ」でひどくアンバランスですが。ここは、基本的にコメディであるゆえです。

 カミングアウトした結果、利害が一致した煌姫と、何かと呼び付けられるようになった守弥、元から忠実な小萩。そして瑠璃姫の4人で帥の宮に罠をかける準備が整うところで、この巻は終わります。次が楽しみ。

 ところで細かいところですが、最初の方で「お油を節約する必要もなくて、ほんとうに、それだけでも感謝しておりますのよ、瑠璃姫」という煌姫に対して「節約……?」「居候のお礼をいってるにしては、どっか、ピントがずれてんのよ」と対する瑠璃姫。平安時代の姫君にしては、非常に活動的な瑠璃姫ですが、さすがに貧乏の経験がないからか、想像力が及ばないのですね。

 あと帥の宮が美男だと聞いて、瑠璃姫の中でおびき出すことの主目的がとっちめることがら、顔を見たいことに徐々にすり変わるあたりは分からないなぁ。面食いってそんなものかな、とも思いますけど、私は顔を覚えるのが苦手な方で、つまり私にとっての人の印象に顔の要素は弱いのです。分からないなぁ、これは(^^;)

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funabenkei | 本の感想(マンガ含) | 09:09 | - | - | - | - |

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